はじめに
本記事でのTOB・MBO投資とは、TOB・MBOの発表後に購入し、買付価格にサヤ寄せしたところで売却して利益を得る投資手法です。
適時開示の確認が必須になりますが、IPO投資経験者であればスムーズに行えると思います。私はIPO投資のように宝くじ感覚で行っています。
また、発表から実施までの期間が短い場合と、国内外の競争法等から許可が必要で長期間(数ヶ月~半年、1年以上)かかる場合がありますが、今回は前者のTOB・MBO実施までの期間が短いケースについてお話します。
長期間かかるケースについては「長期編」として別の記事で紹介させていただきます。
なお、本記事の投資手法はTOB・MBOが見込まれる銘柄を予測して発表前に投資する手法ではありません。
そもそも発表後に買えるのか?
結論から言うと、買える”こと”もあります。実際に、2024年のファンケル(4921)やマネーパートナーズグループ(8732)で約定し、それぞれ4万円弱と1万円強の利益が得られました。
通常、発表後は数千株~数万株、多くても数十万株という売り注文に対して、数百万株~数千万株の買い注文が殺到しストップ配分となります。ストップ配分となった場合、注文数量の多い証券会社から1単位(100株)ずつ配分すると日本取引所グループが定めています。
日本国内の証券会社数は2021年度で300社弱(日本証券業協会「FACT BOOK 2022」より)存在しています。そのため、約3万株の売り注文があればすべての証券会社に配分されますのでどの証券会社で注文しても約定する可能性があります。
各証券会社に割り当てられた後、誰に割り当てるかについては証券会社に委ねられていますので、約定する可能性の高いところから注文することが肝要です。
各社の配分方法についてはお取引のある証券会社にお問い合わせください。
メリット・デメリットとリスク
TOB・MBOの発表後に購入することのメリットは、後述の参加する条件に合致する銘柄であれば、買えればローリスクで利益を得られることです。
ローリスクで利益を得られると言えばIPOと似ていますが、IPOは玉石混交のためせっかく当選しても時には損失となってしまうことがあります。
リスクはTOB・MBOの中止が挙げられますが、会社が「賛同の意見表明」・「応募推奨」をしている場合のみ参加しますので、よほどのことがない限りは中止はないと思います。ただし、絶対ではありません。
また、IPOは新規承認の発表から当選して売却できるようになるまで概ね1ヶ月ほどかかりますが、こちらは発表の翌営業日に買い、その翌営業日以降に買付価格にサヤ寄せされたところで売りと、早ければ発表から2営業日で利益を確定できます。IPOよりも遥かに短い期間で当選(約定)発表、利益確定ができる点もメリットだと考えています。
デメリットといえば、資金が注文する分拘束される点でしょうか。IPOは資金不要で抽選に参加できる証券会社もありますが、こちらは実際に買いの注文を出しますので資金は必ず必要になります。資金がある程度ある方であれば、注文するであろう証券会社に資金を残しておけば良いと思いますが、私は必要に応じて都度入金・出金しています。
参加する条件
もちろん、すべてTOB・MBO銘柄に参加するわけではありません。
以下のすべての条件に合致した銘柄のみ参加します。
1 「賛同の意見表明」・「応募推奨」の適時開示をしている
→TOB・MBO実施の確度が高いことを確認します

2 公開買付数の上限を設定していない(上場廃止を前提としている)
→買付価格にサヤ寄せされるであろうことを確認します(中には上場が維持される案件もあります)

3 「国内外の許可」が不要(適時開示に「許可が必要である旨」の記載がない)
→必要な場合は実施まで長期間かかることが予想され、買付価格付近まで値上がりしづらいです
許可が必要な案件は冒頭で申し上げましたが「長期編」として別記事で解説します
4 買付価格が発表日の終値+制限値幅を超えている
→当たり前ですが、翌営業日に買付価格に到達する場合は利ザヤが得られませんので参加しません
私は手数料を考慮して1万円以上の利益が見込まれる場合に参加しています
制限値幅についてはこちら

銘柄の探し方
・方法1
毎日大引け後に売買停止情報(東証)を参照し、理由に「公開買付に関する発表が行われ、監理銘柄に指定されたため」の記載がある銘柄を探します。

ある場合は、TDnetから「公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」を探して前述の条件を確認します。(件名は微妙に違うことがあります)
開示される時間に決まりはありませんので、売買停止情報の参照とTDnetの検索を夜間のある時間に行うようルーティン化すると良いでしょう。
・方法2
証券会社のアプリ等から立会時間中に「特別買気配」で検索し、買いの注文が数百万株以上の銘柄を探します。
ある場合は方法1と同様に適時開示を確認してください。
こちらの方法は手間が少ないですが、参加する場合は大引けまでに注文を出さなければなりませんので、資金移動や注文など忙しくなることがあります。

注文方法
条件を満たす銘柄がある場合、いよいよ注文となるわけですが、私は最後に「売り注文が10万株以上あるか」ということを確認しています。

売りが3万ほどあればすべての証券会社に配分されますので、可能性はゼロではありませんが流石に低すぎると考えており、証券会社に複数の配分が見込まれる10万株を参加ラインとしています。
大引け直前に売りを引っ込められることもありますが、気にしていても仕方ありませんので後場に入っても売りが10万株以上あれば買い注文を出します。
注文は簡単です。
・買い注文
「成行」で買い注文を出せば間違いありません。
上限価格の指値でも良いですが、お使いの証券会社の配分ルールにご注意下さい。
株数はいくつでも良いですが、私は基本100株にしています。200株以上の配分が見込まれるほど売り注文が多い場合に限って200株や300株の注文を出します。
・売り注文
運良く買えた場合は、買付価格に近づいたところで市場で売却するか、TOB・MBOを担当する証券会社に移管して申し込みましょう。
利益を買付価格までの100%取るのであればTOB・MBOに申し込みとなりますが、実施までの時間と手間を考慮して、いつも市場で売却しています。
使用している証券会社
少しでも約定する確率を上げるためには、IPOと同様に複数の証券会社から参加(買い注文)することが重要です。
参考までに、私が普段TOB・MBOで使っている証券会社を紹介します。
・岩井コスモ証券
・三菱UFJeスマート証券
・地元の対面証券会社2社
上記のすべての証券会社で約定の経験がありますが、おすすめは”地元の”対面証券会社です。
地方であれば約定確率が高く、大都市圏では確率は低いかもしれません。
上記の他にも適した証券会社があるかもしれませんので、ぜひ探してみてください。
余談になりますが、地元の証券会社はどちらも対面型のため担当者から営業がありますが、普段なら気が付かない、監視しない銘柄の提案があり、思いがけない利益をもたらしてくれています。利益を比較すると、TOB・MBOでの利益を提案いただいた銘柄での利益が上回っています。
対面証券を敬遠していた時期もありましたが、TOB・MBO投資をきっかけに口座開設し、今となっては開設して良かったと思っています。
まとめ
長くなってしまいましたので、結局どのような場合に参加すればよいかをまとめます。
・会社が「賛同」かつ「応募を推奨」している
・上場廃止を前提(買付株数の上限がない)
・国内外の許認可が不要(実施までの期間が短い)
・買付価格が発表時点の株価+制限値幅を上回っている
・売り注文が3万株以上
皆さんも日々チェックし、ぜひ参加してみて下さい。
資産形成の一助となれば幸いです。